天然の万能薬と言われる唾液の話
皆さんは「口を開けて寝ていたよ」と家族に言われたりしませんか?
私は疲れたとき、たまに言われることがあります」(笑)
知人で「ドライマウスで困っている」と言っている人もいます。
また、いわゆる「ポカン口」で、この方は口呼吸だなと思うこともあります。
すべて「どうでもいいじゃん」と片付けたいところですが、そうもいかないという唾液の大切さについてのお話です。
唾液は、主に、耳下腺、顎下腺、舌下腺という3つの大きな唾液腺から1日に1000~1500mlほど分泌されますが、分泌が減って、口の中が乾いてしまうと体全体に悪影響を与える可能性が高くなるからです。
特に高齢になると、そのリスクは高まります。
口の中が唾液で潤っていることが直に健康につながっているのです。「天然の万能薬」とも言われる所以です。
その役割は多岐にわたりますが、よく知られているのは主に6つ。
①唾液成分の中のアミラーゼが食べ物の消化を助けたり、味を感じやすくしたりする働き。
②口の中の汚れを洗い流す自浄作用。
③硬い歯から口の中の柔らかい粘膜組織を守る働き。
④酸を中和して口の中を中性に保つ緩衝作用。
⑤リゾチーム、ペルオキシダーゼ、免疫グロブリン、ラクトフェリンといった抗菌成分が入っているため、口の中に侵入した細菌が体に入るのを防ぐ働き。
⑥再石灰化によるむし歯を防ぐ働き。
ドライマウスや唾液の分泌低下により自浄作用が低下すると、口腔内に食物の残りが長期間残留するため、虫歯や歯周病が非常に発症しやすくなります。粘膜保護作用も低下するため舌や粘膜の障害・義歯の不適合・舌苔の増加・嚥下障害・味覚障害なども起こりやすくなります。
また、今注目の「腸内フローラ」と同様に、消化器官の最初の入り口である口腔内にも同じように「口内フローラ」のような細菌叢があり、口内にもさまざまなタイプの細菌が棲んでいます。中には口内に悪影響を与えるものがある一方で、非常に役立つ細菌も棲んでいるのです。
良い影響を与える代表的な存在が唾液にも含まれている乳酸菌。これをうまく活用することで口内環境の改善につながり、それが口腔のみならず、免疫力、腸内環境、メンタル、発ガン予防など身体が正常な機能を発揮するため無くてはなりません。
唾液の分泌量は、ストレスや脱水、癖(ポカン口など)、入れ歯や義歯による口内環境の変化、疾患など些細なことで低下しますが、加齢による低下も気になります。
ちょっと意識を変えることで増やすこともできますから、気になる場合は以下の中から自分に合ったものを取り入れ、習慣にしてみましょう。
<唾液を増やし、口内を潤す方法>
■口呼吸を改め、鼻呼吸をする
鼻呼吸のメリットは、吸う息に湿度を与え、鼻の粘膜や鼻毛が外から入る細菌やウィルスが気道に入るのを防いでくれます。脳の過熱を防ぐ効果も。ヨガが習慣化している方は、意識を変えるだけでできます。
■お口ポカンになる方は、就寝中だけでも市販の口をふさぐテープをつける
■よく噛み、よく話し、よく歌い、よく笑う
レモンや梅干しなど酸っぱいものを食べたり、ガムを噛んだりするのもよい。
■唾液の分泌を促すマッサージ
①耳下腺…耳たぶの前方、顎関節が感じられる部分を手の真ん中3本の指で小さく円を描きながらマッサージ。。
②顎下腺…両手共にグッドサイン。顎のライン(顎の骨と首の境目の柔らかいところ)の耳下から中心のとがったところまでを親指で数か所5~10秒押さえます
③舌下線…顎の中心のとがったところ。顎下腺の少し奥をグッドサインの左右の親指をくっつけて、上方向に押し上げ、5~10秒。上にある舌が少し持ち上がったような感覚が感じられるまで押します。これを数回。
■舌を動かすトレーニング(拙著「80代まで快適に生きるための体と心のセルフケア入門」P60にも一部掲載されています)
①鼻から息を吸って、口から思いきり舌を出して「ハ~」と舌に向かって吐く(ライオンのポーズ)。次は上に向けて、舌を出す。最後に舌を出して、ワイパーのように上半分の円を描く(10回くらい)。
②上唇と歯茎の間に舌を入れ、口を閉じたまま口の中の壁と歯茎の間を舌先で撫でるように回す。右回り左回りで5往復。
<参考資料>
●e-ヘルスネット(厚生労働省)
●meijiからだカイゼン委員会
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