日本海に抱かれた五能線の旅
更新日:2022年3月22日
大自然の圧倒的なスケールに包まれると、人は癒されます。
何に癒されるかは、その人の感性や経験値にもよりますね。
例えば……。
山の頂上から壮大な景色を眺め、深呼吸する。
目の前に何も遮るものがない大平原からの地平線や、大海原からの水平線と空の景色。
運よく日の出や日の入りに出会えると、感動で目が潤むこともあります。
あるいは、広い野原に寝転がって、青い空と雲を眺める。
夜の暗闇の中で、無数の星を眺め、宇宙を感じる。
深~い森の中で、五感を研ぎ澄ます感覚……。
冬の銀世界、霧氷、ダイヤモンドダストの静けさ……。
どれも素晴らしいですが、私は癒しを求めるなら、海に向かうタイプです。
穏やかな瀬戸内の海と、父のふるさと山陰の少し荒い紺碧の海が好きです。
東北三陸地方のリアス式海岸も、滋味あふれる豊かな海で、とても魅かれました。
もちろん、沖縄や南の島の珊瑚礁のエメラルドグリーンも忘れられません。
いつかは行きたいと思っていたのが、東北の日本海側。
コロナ感染が減少している今がチャンスと思い、
以前から行きたかったローカル線乗り鉄の旅に出ました。
目的は二つ。
日本海の海沿いを走る五能線(青森・五所川原ー秋田・能代間)に乗って、ひたすら海を眺めたい。
久しぶりに大好きな温泉を堪能したい。
これだけです。
上越新幹線に乗って新潟へ。
羽越線に乗り換えて、ここから日本海を北上する旅です。
初日は山形の湯野浜温泉で一泊。
翌日は鶴岡から奥羽本線を経由して、五能線に乗り入れます。
お天気には恵まれず、雨、みぞれ、あられ、時々日が射すという感じでしょうか。
それでも、波打ち際を走る五能線から白い波しぶきが立つ海を眺めると、
コロナ禍での閉塞感や、もろもろのストレスで疲れた心を洗い流してくれます。
二泊目は青森の北端に近い深浦近くまで北上し、絶景露天風呂で有名な不老ふ死温泉へ。
念願の、海岸と一体化した野趣あふれる露天風呂にチャレンジです。
女性は湯あみ着を着用できます。
どちらかと言えば、混浴よりも、みぞれの中でお風呂までの50メートル往復がチャレンジなのです(運よく虹がかかった写真を部屋からパシャリ。写真左下が露天風呂)。
波打ち際の露天からの景色は、まさに遮るものが何もない絶景です。
真っ白いしぶきが立つ荒波の海と一体化したような感覚。
顔は寒いけれど、体は染み渡るように温かい。
目の前では、渡り鳥が波間で羽を休めています。
非日常で、とても不思議な気分でした。
ヨガでは、人間をひとつの小宇宙であるととらえます。
そして、小宇宙(内側の本質)が大宇宙(神の意識)と一体化した時、サマーディ(三昧、悟り、解脱)に到達できると言われています。
修行者はそれを目指して、ヨガや瞑想の修行をしてきました。
そのような凄い修行とはまったく別物ではありますが、大自然に包まれると、自分という小宇宙を感じることができます。
一体化したような感覚を味わった時、自分が日々悩んだり気にしたりしていることが、この大いなる自然の営みから見ると、いかにちっぽけなものであるか。
そんなことはどうでもよくなり、ひたすら今ここにいる自分を味わいたいと思います。
今回は、海と温泉が、自分の中にたまっていたサビを洗い流してくれる旅になりました。
あなたを包み、癒してくれる大自然はどんなところでしょうか?
わざわざ遠い所に行かなくても、ふと空を見上げたり、日の出日の入りを見つめるだけで、胸の中のもやもやがスーッと晴れることもありますね。
自分自身も自然の中の一部、そのままでいいのです。
※写真は順に、ほんの一瞬虹がかかった不老ふ死温泉からの海、写真NGでしたので絵葉書から撮った露天風呂の写真、五能線から再び見えた虹と日本海の荒波。
Comentários