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執筆者の写真ミウラ

私が認知症対策にアロマを勧める理由ー勉強編

更新日:2021年4月3日

老人保健施設にいる私の母が、昨年10月初旬に食事が1割も摂れなくなり、終末期のケアになっていることは、前々回のブログでもお知らせしました。

施設に入った翌日から緊急事態宣言が出て、面会できない時期が続き、衰えが進みました。


以来3ヶ月、兄は毎日通って食事の介助をすることに力を注ぎ、数日に一度しか行けない私はアロママッサージをすることに力を注いで今に至っています。

なぜ、アロママッサージなのか?


2~3年前にさかのぼります。

母の認知症が進み、車椅子になって歩けなくなった頃より、私はヨガを一緒にやることに限界を感じ、アロママッサージに切り替えていました。

目的は主に3つ。

●体の循環をよくすること(特に下半身)

●認知機能の低下を少しでも遅らせること

●メンタルの安定

勉強と実体験から、アロマの効果を信頼していました。

香りがダメな人や肌に合わない人もいますから、誰にでも適しているとは言い切れません。

母は「いい香りねぇ」と言って、アロママッサージを好んでいたので、迷わず施設の方の了解を得て始めました。

お陰様で、かつての意識が朦朧としていた状態から脱し、今は食事も平均して5割程度摂れるようになり、しっかりと意思を伝えることができています。老衰は日に日に進んでいますから、傾眠の状態は長くなっていますが。

現時点での母の認知症は、新しい記憶が積み重ならないだけで、昔の記憶や物事を理解し、判断する力はそれほど衰えていません。


私の母に限らず、認知症は長生きするほど罹患する可能性は高くなります。 他人ごとではありませんね。

脳科学の研究が画期的に進んだことで、認知症の治療や予防に関しては明るいニュースがあるのをご存知でしょうか?

2004年に嗅覚受容体の存在が証明されてから、嗅覚の研究が著しく発展しています。

嬉しいことに、アロマの香りが認知症の治療と予防に効果があることがわかってきたので、そのことについてお知らせします。

脳内の話ですから少し難しくなりますが、余裕がある時にじっくり読んでください。



精油(エッセンシャルオイル)の芳香成分が私たちの体に吸収されるには、主に3つのルートがあります。

ルート1 鼻から脳へ

ルート2 肺から血液を通って全身へ

ルート3 皮膚から毛細血管を流れる血液を通って全身へ


この3通りのルートから、アロマの有効成分は体内に入り、自律神経や内分泌系に働きかけて心身のバランスを整えてくれます。

中でもルート1は、鼻からダイレクトに脳内に伝達されるので、アロマテラピーにおいては最も重要なルート。認知症の治療や予防に効くとされるのは、アロマの香りが脳内の扁桃体や海馬などにダイレクトに刺激を与えるからなのです。   


<香りが鼻から脳に伝わるメカニズム> 精油の香り成分が鼻の奥に入ると、その情報は電気的な信号に変わります。嗅神経に伝わる信号は脳に送られ、視床と大脳辺縁系に流れます。

情報は二つの方向に分かれ、一方は視床下部を経て大脳皮質の嗅覚野で「におい」として認識されます。アロマの香りが視床下部に働きかけることで、自律神経やホルモンのバランスを整えることができるのです。 もう一方は、情動反応を起こす扁桃体や、記憶を司る海馬のある大脳辺縁系につながります。 香りを嗅いだ時に、扁桃体では快・不快の感情などが刺激されたり、海馬では香りに関わる懐かしい記憶が甦ったりして、嗅覚からの経路は、精油の効能が脳内にダイレクトに影響を及ぼすことがわかっているのです。 イライラした時や、疲れた時に好きな香りを嗅いだら気分がすっきりしたり、リラックスできるのは、このような生理的なメカニズムが働くからです。




<香りは脳をよみがえらせる!>

私たちの体は、細胞の新陳代謝が常に行われていますが、中高年期に入ると再生される細胞数より、寿命を終えて死滅する細胞数の方が多くなり、体内の代謝が衰えていきます。

これが、いわゆる老化で、脳でも同じことが起こっています。 これまでは、脳の神経細胞は再生しないと考えられていましたが、神経科学の発達によって「老いても脳の神経は鍛えられる(脳神経の可塑性)」ということが判明しています。

そのカギとなるのが、神経細胞ニューロンを結びつける接合部「シナプス」です。 そして、「におい」が脳神経のシナプスに与える刺激が注目されているのです。


脳内の話は非常に難しいので、携帯電話の通信ネットワークの例えを引用しましょう。

「ちょっと前は場所によっては電話がつながりにくかったけれど、中継基地が増設されて不便を感じなくなりました。これがシナプスの接合部の増加です。また、電話が集中するとかかりにくくなりますが、回線の容量を増やして解決できました。これが、シナプスを通過する情報を繰り返すことによる増強です。外部から受ける刺激の中でも、においは脳内の「回線の増設、増強」を促すので、記憶に大きな影響を与えると考えられています」(塩田清二著「香りはなぜ脳に効くのか」NHK出版部) 老化で脳神経の回路が切れてしまっても、香りの刺激により新しいシナプスを増やし、神経細胞のネットワークが再生することで、脳内回路はよみがえることがわかってきました。


アロマについては、鳥取大学の神保太樹博士と浦上克哉教授の研究(2008年)から、アロマテラピーが認知機能の改善に効果があることがわかっています。

介護老人保健施設のアルツハイマー病を含む高齢者を対象に、28日間アロマ療法を実施したところ、抽象的思考力が改善され、やめると徐々に元の状態に戻ったのです。

特別養護老人ホームに入居する高度アルツハイマーの高齢者に行った同様の調査でも改善が見られました。 二つの調査研究から、特にアルツハイマー患者に特有の見当識(場所や時間、自分が何者であるかを把握すること)に改善が見られたとのこと。

香りは直接、海馬のある大脳辺縁系に伝わりますから、香りを刺激として与えることで、新しい神経細胞が作られることが促進され、自己に対する見当識の改善が見られたと考えられています。


次回実践編では、もう少し具体的に認知症予防について、どんな精油がいいのか? どのように生活に取り入れられるのか?など、アロマの使い方についてお話しします。

アロマの基本的な知識として、HP本文アロマのページを読んでおくと、よりわかりやすいかと思います。


<参考文献>

●<香り>はなぜ脳に効くのか―アロマセラピーと先端医療(塩田清二著・NHK出版部)

●健康長寿ネット・認知症のアロマ療法(公益財団法人健康長寿科学振興財団HP)

●認知症とアロマセラピー(鳥取大学発ベンチャー(株)ハイパーブレインHP)

●公益社団法人アロマ環境協会HP



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