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執筆者の写真ミウラ

脳のケア②—ワーキングメモリを解放する

「ワーキングメモリ」という言葉をご存知でしょうか?

作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し、処理する能力のことで、作業記憶とも言います。

最近たくさん用事があると、何かが抜け落ちたり、思うように効率よくこなせなくなったと感じるようになりました。用事があって2階に上がったのに、「あれ? 何しに来たんだっけ?」。これです。


作業部屋に例えてみましょう。

ワーキングメモリは作業机、入ってくる情報を本とします。

いったん本(入ってきた情報)を作業机に並べて保存します。そして机の上でわかりやすく並べ替え、いらない本は捨てます。そして机の上の整理した情報の中で必要なものは長期記憶するために本棚(側頭葉)に移動させます。


机の大きさは人それぞれです。

入ってくる情報をうまくさばける人もいますが、机が小さく、本の数が多すぎるとこぼれ落ちてしまします。

この例えを知ると、私自身はその机に未処理の余計な物があり過ぎて、こぼれ落ちてるのだと思います。


ワーキングメモリは、何かの作業をするために一時的に留め置きする働きで、これも前頭葉と海馬の連動によって短期記憶が行っています。

例えば、レシピ通りにお料理を作るなど、高い能力を持つ人間ならではの脳の働きです。

これが同時に処理できる能力は意外と少なくて、せいぜい5~7と言われています。処理能力は加齢によって衰えていき、50代になる頃は30%も低下すると言われています。


残念なことに、ワーキングメモリはトレーニングとかで鍛えて改善できるものではないようです。

身も蓋もない話をしましたが、むしろ効率よく解放して、次から次へと新しい情報を処理することが大切なのです。


■ワーキングメモリの解放術


①机に上がった処理すべき情報はためずにすぐ処理する


②すぐに対応できないものはメモして、優先順位をつける


③覚えるには書く&描くことで映像化する

ペンを使っても良し、頭の中でも良し。コツとしては、ビジュアル映像で絵を描くように処理することです。


今から20年以上前ですが、私は義父と実父の認知症の診察に同席した経験があります。「長谷川式認知症スケール」という、認知症の専門医が開発したスクリーニング検査に数回立ち合いました。

けっこう難しいです。

当時40代の私でも満点はとれないかも…と思いました。100から7を引いて、その答えから7を引いてと、5〜6問の引き算をします。ワーキングメモリの検査のようです。


私も怪しかったのが、例えば、3つの単語「桜、猫、電車」を覚えてくださいと言われ、別の設問を数問終えた後に、先ほどの3つの単語は?と聞かれます。

緊張してたら思い出せないなと感じました。

こんな時ですね、ビジュアルの映像で覚える技が使えそうなのは。

電車の中に猫がちょこんと座っていて、窓の外は桜が満開のジブリ映画のような映像をビジュアルとして覚えることで記憶に留めることができそうです。


■ワーキングメモリの大敵はストレス?


連休中に家族全員がコロナ感染した際、脳の働きについて、家族でこんな話をしました。

全員症状は違えど軽症ではなく、それなりのダメージが続きました。

その時「いつものように頭が働かない」との自覚があることで一致しました。

診察を受ける、薬をもらう、連日の保健所とのやりとり、三食を準備して食べる、薬を飲む、自分の今後の仕事に関する手配…といった生活する上での単純な作業が簡単ではありませんでした。

思うようにできなくて、イライラする自分に嫌気がさします。


ワーキングメモリはストレスに弱いのです。

不安や恐怖といったネガティブな感情が脳の偏桃体を活性化させ、ストレスホルモンが分泌します。それが短時間で済まないと慢性ストレスになってワーキングメモリを占領してしまい、脳のパフォーマンスを落とすことにつながってしまいます。


ストレスマネージメントは、脳へのダメージを軽くするためにも大切なのだと痛感した出来事でした。


次回は、難聴と脳機能の低下との関係について


<参考資料>「転ばぬ先の杖・認知症予防特選集」(長谷川嘉哉著)

クロワッサンオンライン「物忘れと深く関わっているワーキングメモリとは?」










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