骨活のすすめ②―実践編
更新日:2023年7月25日
先週の予備知識編に続き、今回はいよいよ実践編です。生活習慣に取り入れやすいエクササイズ等についてご紹介します。
私たちの体は全部で206本の骨で成り立っています。
1本の骨が新陳代謝で入れ替わるには3~4カ月かかり、全身の骨が入れ替わるのには、約3年~5年かかると言われています。
日々の運動と骨を刺激する習慣の積み重ねで、骨代謝を促すことができます。
ところが、頑張って2~3日はできても、暮らしの中で継続して習慣化するのはとても大変です。コツは、日頃の生活習慣に組み込んで、その行動をルーティーンにすること。
筆者自身が行っていることをいくつかご紹介しますので、考え方を参考にしてみてください。行う内容やタイミング・回数は、皆さんの体調と生活習慣に適したやり方を自分で作り上げることが大切です。
●鎌田式かかと落とし体操
1年前のブログでも紹介しました。医師の鎌田實先生が実践している骨粗しょう症予防の体操です。
椅子の背や台、壁などにつかまり、背すじを伸ばして立ち、つま先を上げてから、次にかかとを上げて2~3秒キープ、その後かかとを床にストンと重心をかけながら落とします。骨は軽い衝撃を受けると骨代謝が促され、強くなることがわかっています。同時に、この運動は「第2の心臓」と言われるふくらはぎの筋肉も強化されます。
回数は1日30回程度が目安です。骨の弱い人がやりすぎるのは逆効果ですから、ご自分の体調に合わせて、多くても50回程度までにしましょう。
筆者はこれを、毎日入浴時に脱衣所で行うことを生活習慣に組み込みました。ここに来たらルーティーンで必ず10~30回は行うと決めています。今では、やらないと気持ち悪い感じです。
他にも、例えばトイレで、水やり時に、電子レンジ使用中になど、毎日必ずやることに加えれば、それが習慣になります。
●簡単なバランス立ちポーズ
1本足で体重を支えることで、骨折リスクの高い大腿骨を強くすることができます。
背すじを伸ばし、まっすぐ立って、お腹を軽くへこませてから、重心を片足に移します。
慣れないうちは、数センチ足を床から離し、バランスが取れるようにキープします(写真左)。慣れてきたら膝を高く上げて片手で抱え、もう一方の手は椅子の背や台、壁などにつかまって行いましょう(写真中)。
さらに慣れて、つかまらずにバランスが取れるようなら、両手で抱えてバランスを保ちます(写真右)。必ず左右両方行います。各60秒ずつ行っても2分しかかかりません。揺れてバランスを崩してもOK。揺れながらも踏ん張ることが大切です。
●ウォーキング
ウォーキングはシニアに最も安全な有酸素運動であり、自重で骨を刺激する運動でもあります。普段の生活でも、階段を下りる際には、少しかかとに刺激がかかるようにして下りてみるのもお勧めです。
景色を眺めたり、道端の草花の写真を撮ったりといった楽しみもあるのですが、途中15分位、一生懸命歩く時間を作ります。普段より歩幅を10センチ程度増やして、大股で歩きます。早歩きとゆっくり歩きを3分ずつ位交互に繰り返しましょう。
ウォーキングは次の項目でも触れる日光浴も兼ねますから、一石二鳥以上の効果が得られます。
ちなみに、プールでのウォーキングについて。
水中ウォーキング自体は、高齢者や体力のない方でも無理なくできる有酸素運動です。水の抵抗による運動効果で筋トレ効果がありますし、基礎代謝も上がる全身運動で体を強くしてくれます。
ただし、骨活という視点で考えると、水中ウォーキングは適しません。水の浮力で体重が減りますから、自重を利用したトレーニング効果は期待できません。
●日光浴
ビタミンDは、カルシウムの吸収をよくする働きがあるので、骨を作るためには欠かせない成分です。食事から摂ることもできますが、「サンシャインビタミン」とも言われるように、人間の体は日光を浴びることでビタミンDを作り出すことができます。
食事や日光から得たビタミンDは肝臓や腎臓で代謝され、活性型ビタミンDへと変化することで、骨の材料となるカルシウムの吸収を助けたり、骨へのカルシウム沈着を調整し骨形成を促します。
夏なら木陰で30分、冬なら1時間程度、日に当たるだけでじゅうぶんと言われています。
ただし、ガラスは紫外線をあまり通さないため、窓越しの日光浴では効果が望めません。
一方で、紫外線を浴びることは皮膚がんや目の病気のリスクが高まるというデメリットもあります。
その兼ね合いを考えて、頭や顔に直射日光を浴びないような工夫が必要です。日光浴は手の平だけでもOKと言う医師もいますから、部分的な日向ぼっこをお勧めします。
私が実践しているのは、バルコニーの日なたと日陰の境目にヨガマットを敷き、膝から下の足の部分だけ日に当たるようにして、仰向けやうつ伏せのヨガを数十分行っています。
帽子やUVカットの布で当たりたくない部分を覆う工夫も忘れずに。私はテニス用の顔を覆うマスクを活用しています。人には決して見られたくない出で立ちですが…(笑)。
私たちの体は加齢により、体内時計の調節機能が弱まることで質の良い睡眠がとれなくなります。
日光を浴びることで、睡眠ホルモン=メラトニンの原料になるセロトニンが作られ、だいたい12~14時間後になると、それがメラトニンに変わり熟睡できます。骨は夜間眠っているあいだに骨形成が進みますから、骨を作るのを促すためにも午前中の日光浴がお勧めです。
次回は栄養編です。
<参考文献>
●「シニアの骨粗しょう症・圧迫骨折を防ぐ!(別冊NHKきょうの健康)」NHK出版
●日刊スポーツコラム「鎌田實:認知機能を落とさない生き方」
●公益財団法人骨粗鬆症財団HP
●東大阪病院HP骨粗鬆症について
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