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加齢にともなう尿もれ、頻尿問題③

更新日:2023年3月15日

最新のデータ(2019年)では87.45歳(厚労省簡易生命表)。

何の数字かというと、わかりますよね。日本人女性の平均寿命です。

ちなみに、男性は81.41歳です。


50.5歳……これは何の数字でしょうか?

女性が閉経する平均年齢です。

寿命は年々延びても、閉経年齢はそれほど変わりません。

私たちは、閉経してから40年弱生きる可能性があるということがわかります。


その昔、毎月の生理が面倒なので、早く終わらないかなと願っていた時期がありました。

50歳を過ぎて、その時期が来た時に大きな勘違いをしていたことに気づきました。

閉経するということは女性ホルモンの分泌が低下するということ。

それによって私自身は大きく骨密度が低下してしまい、自分の体が女性ホルモンによっていかに守られていたかを痛感することになりました。


尿もれ、頻尿問題も女性ホルモンに守られていた中のひとつです。

骨盤底筋は、私たちの胴体の一番下にあり、姿勢を安定させ、骨盤内の臓器を保持し、排せつや生殖の機能を支えてくれる筋肉群から成っています。

内臓の負荷を支えると同時に、直腸と泌尿生殖系の管の開口を制御するという相反する機能を果たしてくれる、非常にありがたい筋肉群なのです。

閉経後の女性ホルモン分泌の減少と、その後の筋肉量の減少により、これらの重要な機能が低下した結果起きるのが、尿もれや頻尿、臓器脱、便もれといった症状です。


幸いなことに、骨盤底筋は自分の意思で動かせるものがありますから、セルフメンテナンスを行えば、努力次第で改善が見られます。

決して命にかかわる病気ではありませんが、40年弱という閉経後の長い人生を思うように生きていくために、今のうちから運動によるトレーニングと骨盤底筋をいたわる生活を始めましょう。


積極的な強化対策としてのアプローチは二つあります。

直接的なトレーニングと間接的なトレーニングです。


●直接的なトレーニング…骨盤底筋体操(基本姿勢)

①仰向けに寝た状態で足を腰幅に開いて膝を立てます。 リラックスした状態で全身の力を抜きます。

②お腹に手を当て、肛門と膣、尿道を締めて、体の中に引き上げるように締めた状態で10秒間キープします。

キープ後は10秒ほどリラックスします。

この運動を1セットとして10セットを目安に行いましょう。

肛門の締め方は尾てい骨に意識を向けて、尾てい骨を押し上げる(骨盤を後傾する)ようなイメージを持ちましょう。

尿道の締め方はおしっこを我慢している時をイメージすると締めやすくなります。

③上と同様に、今度は速いテンポで「キュッパッ、キュッパッ」と肛門、膣、尿道を締める。10回繰り返す。


コツがわかったら、椅子に座って、立って机にもたれて、よつばいなどでもできます。

これを日課にして繰り返します。

直接的なトレーニングはできていると実感できる人と、できない人に分かれます。

しばらく継続して効果が感じられない場合は、間接的なトレーニングをお勧めします。


●間接的なトレーニング…つながりのある大きな筋肉を使う

骨盤底筋は羽根つきナプキンと同じくらいの広さしかなく、厚みは6~9ミリですから、コントロールできているかわかりにくいとういう難点があります。

そのため、内転筋群や腹横筋、お尻の筋肉など、つながっている周りの大きな筋肉を動かすことによって、一緒に骨盤底筋も収縮させるというやり方があります。


ヨガで効果的なポーズはたくさんあります。

例えば、セツバンダ・アーサナ(橋のポーズ)。

図のように仰向けでお尻を持ち上げるポーズです。

太ももの間にボールやたたんだバスタオルなどを挟んで、それを吐く息でつぶすだけで大きな筋肉が収縮します。

それによって骨盤底筋も収縮して引き上がります。

脚を開いて行うワイドスクワットも、吐く息で内ももとお尻の穴を締めるような意識で行えば、同じような効果が得られます。


他にも、両足でしっかりと踏み込み、下腹部を使って背骨を引き上げるようなヨガを行うことで、骨盤底筋は強化されます。

戦士のポーズの1,2,3やトリコーナ・アーサナ、木のポーズ、三日月のポーズなど、ヨガには間接的に骨盤底筋にアプローチできるポーズがたくさんあります。

私自身が14年間ヨガを続けていて、知らず知らずのうちに鍛えられていたんだなと実感できるのです。


8月はコミュニティクラスでもオンラインでも、骨盤底筋をテーマにヨガを行いました。

昨日20日に実施したオンラインヨガの骨盤底筋第2弾は、30日の録画ビデオサービスでも配信いたします。


原因不明の過活動膀胱による頻尿については、生活スタイルの見直しも大切です。

膀胱に少ししか溜まっていないのに、早め早めにトイレに行く習慣がついていませんか?

膀胱が知覚過敏になり、少しの尿に過剰に反応してしまうことがあります。


元々、私たちの体は初めに尿意を感じてから、しばらく我慢できる仕組みになっています。

ですから、トイレに行くのを少し我慢して、膀胱に尿をたくさん溜められるように「膀胱訓練」をする方法があります。

少し行きたくなっても、尿道をギュッと締めて我慢するうちに、膀胱の緊張は緩み、尿意の波が静かになります。

初めは5分くらい我慢するのを、10分、15分と徐々に伸ばしてみます。

排尿間隔が2~3時間になり、1回の排尿量が200~400mlになれば、正常に戻っています。


日常の暮らしでは、ちょっとした生活習慣の見直しが、骨盤底筋をいたわることになります。

以下のチェックをしてみましょう。


●便秘が習慣化して、毎日いきんで出していませんか?

排便のたびに強くいきむと骨盤底に大きな負担がかかり、ますます緩んでしまいます。

食生活や運動、生活パターンを見直して、便秘の解消に努めましょう。


●冷房の影響で冷え性になっていませんか?

夏の冷房は必要ですが、ソックスやひざ掛け、睡眠時の腹巻などで下半身の保温に努めましょう。


●夕方になると脚のむくみが気になることはありませんか?

重力の関係で、リンパの循環が悪いと下半身に水分が滞りがちになります。

その状態で夜寝ると、体の態勢が変わることで滞っていた水分を排出しようとする機能が活発になり、夜間頻尿になります。

就寝する3時間前に、ふくらはぎの筋肉をマッサージしたり、下半身のストレッチをして滞りを解消しておきましょう。


●ストレスによる食べ過ぎや運動不足で体重が急激に増えていませんか?

体重が増えるほどに、骨盤底には大きな負担がかかります。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病の原因にもなりますし、膝関節にも負担がかかります。

やせ過ぎで筋肉量が減るのも心配ですから、腹八分目、適度な運動を心がけましょう。


●コルセットやガードルで骨盤を締めていませんか?

お腹を締め付けると、腹圧が少しかかっただけで尿もれしやすくなります。

足に合わない靴も血行が悪くなり、骨盤底を傷めます。


高齢になっても、自由に行動できて、自分でトイレに行けることは幸せなこと。

骨盤底筋を今から鍛えることは、未来の自分に対するプレゼントなのです。


<参考資料>

「我慢しないで!女性の頻尿・尿失禁」(日刊スポーツコラム、日大医学部泌尿器科学系主任教授 高橋悟)

「高尾美穂 骨盤底筋ワークショップ講義資料」(産婦人科医、スポーツドクター、ヨガインストラクター)


















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