top of page

東京オリンピックの空の下で…

コロナ感染者が、東京で5000人を超えてしまいました。


そして、東京オリンピック。

何はともあれ無事に終わって、今はひと安心という感じでしょうか。


感染者が増え続ける東京でオリンピックを開催することのリスクを考えると、手放しで楽しむことはできませんでした。

とは言っても、やるのであれば、これを目標に練習を積み重ねてきたアスリートの皆さんのパフォーマンスには、拍手を送りたい気持ちはあります。

研修までしっかりと受けたボランティアは、さんざん悩んだ末に、1か月前にリタイア。

一方で、それでも予定通りやる道を選択した夫は、ボランティアにどっぷり関わっていました。


コロナ感染への不安と、選手への応援の気持ち、露呈した関係者のさまざまなスキャンダルに対する不信感…etc.

私にとっては何とも複雑で、モヤモヤした気持ちを抱えながらの東京オリンピック週間を過ごすことになりました。

ボランティアは、コロナウィルスを持ち帰る可能性もあるわけですから、とりあえずは、ユニフォームなど衣類一式の洗濯係でサポートしていました。


仕事にもよりますが、ボランティアはシフトによって早朝から行ったり、帰りは深夜になったりで、勤務時間はまちまちです。

しかも、自宅と会場の往復にも気を使い、毎日の体温測定、帰宅直後のシャワーと、コロナ対策は自宅に戻っても自己管理が求められます。

それに毎日のユニフォームの洗濯があるわけで、一人暮らしや、地方から来てホテル暮らしの方は、さぞかし大変だったことでしょう。


そんなわけで、私の東京オリンピックは、当初抱いていた関わりとは少し違うものになりました。

それでも、好きな水泳や陸上競技と、サーフィンやスポーツクライミング、スケートボードなどの新しい競技、マイナーなところでは高飛び込みや板飛び込みなどを観て、それなりに楽しむことはできました。


東京オリンピックでもう一つ楽しみにしていたのが、開会式当日の午後に行われるブルーインパルスの五輪飛行でした。


さかのぼること57年前、1964年10月10日の東京オリンピック開会式。

当時小学生だった私は、雲ひとつない抜けるような青空に大きく描かれた五輪マークを品川の自宅窓から眺めつつ、テレビに映った国立競技場の空に広がっている五輪マークと見比べて、それが同じものであることに感動していました。

子どもにとっては不思議な体験で、忘れられない思い出になっています。

これを話すと年がバレバレですが、今となっては東京育ちゆえの貴重な体験でした。


7月23日午後12時30分過ぎ、あの日の空が再現されるかもしれないと胸をときめかせ、今回は目黒の空の下ですが、自宅のルーフバルコニーから空を見上げていました。

あいにく、真夏の空は雲に覆われていました。

お隣りの家の屋上や、近くのお宅のバルコニー、マンションの屋上にも、ギャラリーがちらほらといます。

「あ、あそこだ!」と、どなたかが指さした遠く東の空から6機が上昇してきました(今回は先導機が1機増えています)。

そのうち雲に隠れて見えなくなり、しばらくすると雲の合間から出てきたりで、しばらく東京の空を旋回した後、5色のスモークで大きな円を描き始めました。

5機は、それぞれのカラーで弧のような線を描きますが、雲に隠れたり、出てきたり…。


あの日の抜けるような青空と、雲に覆われた夏の空は大きく違いました。

一生懸命に写真を撮ろうと試みましたが、残念ながら、五つの輪を鮮明にとらえることはできませんでした。


57年前の五輪飛行のことを少し調べてみました。


航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」は、開会式の空に五輪を描くという、これまでにない要請を受け、オリンピックに向けて計画は入念に練られていました。

選ばれた5名のパイロットのうち、今もご存命しているのは2名だけだそうです。

その方々の証言では、当時、何度かスモークで五輪を描く飛行訓練を行うものの、思っていた以上に難しく、1度も成功していなかったそうです。

前日はどしゃ降りで、明日の飛行は中止になるだろうと、皆さんは深酒をして寝たのだとか。

翌朝は目の覚めるような日本晴れ。

慌てて飛び起きて、駐機場に駆け付けたのでした。

「イチカバチか。うまくいくかわからなかった」と、当時を振り返っています。

目と勘だけを頼りに隊形を整え、一気に右旋回をしてスモークを描いたのでした。

結果は、見事に大成功。

「あんなにきれいな空はなかった。生涯で最高のフライトだった」と。(時事.comより)


その通りなんです。

おそらく子ども時代のノスタルジーが、思い出を美化している面もあるのでしょうが、57年前のあの日の五輪の空は、とても美しかったのです。

今回の飛行も、お天気にさえ恵まれていれば、大成功だったはず。

夏の雲に阻まれて残念でしたが、まだチャンスはあります。

来る8月24日、パラリンピック開会式(お昼過ぎ12時40分~?)にもブルーインパルスの飛行があると聞きました。

五輪マークを描くのか?

パラリンピックのマークを描くのか?

定かではありませんが、とにかくお天気に恵まれて、美しいスモークが見れますようにと、今から願っています。

東京の空の下の皆さん、それぞれの場所で、私と一緒に空を眺めてみませんか?






bottom of page