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脳のケア①—物忘れに困っていませんか?

最近、固有名詞が出てこなくなりました。

あるエピソードを話そうとして、「ほら、あの人、名前出てこない。あの番組に出てる人よ」とか「あそこに住んでるのよね、あそこ」とか、「あれ、それ」でしか説明できないのです。

同じような年代が集まると、こういった物忘れは認知症の始まりかも…といった話題が多くなりました。



物忘れの原因の1つには、脳の前頭葉の機能低下が深く関わっているようです。

情報を入れてから引き出す脳の機能を大きく分類すると、3段階に分かれます。

新しい経験や知識をインプットする「記銘力」と、記銘した内容を保持しておく「保持力」、保持した内容を必要に応じてアウトプットする「想起力」

記銘力、保持力には、脳の奥の海馬が関与しています。感覚器から取り込まれた新しい情報は、海馬に記銘されます。海馬は記憶の中枢を担っていて、新しい情報は海馬によって脳に取り込まれます。海馬では、同時に情報の選択も行われ、必要な情報だけが側頭葉に移動し保存されます(保持力)。

そして、想起力は脳の前頭葉の働きによって引き出されます。


認知症の専門医長谷川嘉哉先生の電子書籍「転ばぬ先の杖」では、図書館の本を例にわかりやすく前頭葉と側頭葉の役割を説明しています。

膨大な量の本の中から読みたい本を見つけるには、本についたラベルの棚の前に立つことです。そのラベルをつける役目が前頭葉。本棚自体が側頭葉になります。

本棚自体が崩れて、本がバラバラになったら認知症が疑われますが、言葉を忘れて思い出せないのはラベルの付け方の問題で、加齢によるごく自然な現象です。


■私の脳は憶えられないのか、思い出せないのか?

一般的には、前頭葉による想起力の低下から始まって、その後、記銘力の低下に移る人が多いようです。言葉が思い出せない程度では認知症ではありません。

記銘力の衰えに気づいた頃に軽度の認知症が心配になりますから、まずは「思い出す」という前頭葉の活性化が大切になるのです。


前頭葉の衰えは高齢者に限らず、そもそもは30代から始まっています。年だからと諦めずに、他から原因を探ると、私たち現代人ならではの理由に辿り着きます。

情報過多によるストレスフルな生活習慣です。


ひと昔前に比べると、私たちが得られる情報は膨大に膨らんでいて、脳がインプットばかりしています。その分、アウトプットしているでしょうか?

スマホが大事な情報をすべて記録してくれるので、憶える必要がなくなりました。

次の項目を聞かれたらすぐに答えられますか?

自分の住所・電話番号・生年月日、家族の年齢や生年月日、身内や親しい知人の住所と電話番号、1週間先までの自分のスケジュール。

私は知人の連絡先と自分のスケジュールをスマホで管理しているので、家族の生年月日までは空で言えますが、後は怪しいです。

圧倒的に想起しなくても済む生活になっていることに気づきます。


■想起力を活性化させる具体的対策



①覚えたいことは書く、あるいはメモする習慣をつける

昔は書いて覚えていたのに、今は字を書くこと自体少なくなっていませんか? 「ペンで字を書く」という習慣を何らかの形で復活させましょう。

ちなみに、夫の祖母は100歳まで英語の先生をして、その後、脳梗塞で寝たきりになりましたが、104歳で亡くなるまで認知機能はしっかりしていました。寝たきりになる前まで、その日のできごとを毎日手帳に書いていました。


②「思い出せなかった言葉」ノートを作る

これは先の長谷川先生のお薦めです。これを見返したりすると、自分が覚えられない言葉の傾向もわかってきて、そのうち底上げされ、前頭葉の活性化につながるようです。


③デジタルデトックスをして、脳を休ませる

テレビやネット、ゲーム、スマホ使用で疲労気味の脳を休ませ、自然の中でゆったりする時間をとり、神経が交感神経優位の状態から副交感神経優位になる時間を作りましょう。

ストレスフルな生活習慣が認知症のリスク要因にもなります。


■物忘れを改善させる生活習慣のポイント


人間の脳は20歳をピークに衰え、30歳を超えると、脳の神経細胞は一日10万個の割合で壊れますが、人間の脳には千数百億個の神経細胞がありますし、前頭葉と海馬の神経細胞はかなり高齢になっても再生しますから、それほど問題ではありません。


日常生活の出来事や新しく記憶した情報を整理するのは脳の奥にある海馬です。ここで整理された情報は、大脳の表面に広がる大脳皮質に送られて蓄積されます。

加齢によって物忘れが生じるのは、脳血流が減少し、強いストレスがデリケートな海馬にダメージを与えるからです。その結果、脳の働きが鈍り、記憶の整理に漏れが生じてしまいます。

大事なのは、海馬に刺激を与え、脳が適切に機能する以下のような生活習慣を身につけることです。


①適度な運動の習慣を身につける

全身の血流を良くすることで、脳内の血流も促されます(脳のケア⑦にて紹介予定)。

②7時間程度の質の良い睡眠をとる

睡眠は5時間以内の短すぎも10時間以上の長過ぎも、脳にとっては良くありません。

③脳に良いバランスのとれた食事

和食を基本とし、脳に良い食材をプラスして摂る(脳のケア④で紹介予定)。

④ルーティーンを決めて、規則正しい生活をする

⑤自分の好きなこと、楽しめることを週に一度は行う


これは余談ですが、私は友人と過去の話をしていて、憶えていないことが多いので有名です。認知機能に重大な問題があるのでしょうか?

皆さんからは「興味のないことはあまり聞いていない」と言われますが、自分では聞いているつもりですが、多分そうなのだと思います。そういう時の脳はぼんやりした状態で聞いているのでしょう。

これは「注意障害」かもしれませんが、「記銘障害」ではないようです。

自分では脳を一杯一杯にしないように、無意識的に断捨離をしていると勝手に解釈しています(笑)。

次回は「ワーキングメモリ」について。


<参考資料>「転ばぬ先の杖・認知症予防特選集」(長谷川嘉哉著)



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